昨年度、伊勢崎市教育委員会及び市内の学校の協力を得て、ポルトガル語版WISC-Ⅳを実施しました。その実績を基に作成したものです。
この事業は、赤い羽根共同募金の助成事業です。学校、保護者に対し無料で実施することができました。助成に感謝致します。
外国人児童生徒の中で、群馬県で最多の国籍はブラジルであることから、ブラジル系児童生徒をまず対象にしました。日本語力がまだ不十分な児童生徒が母国語版による知能検査を受けることで、その発達の特性など「個」の特性をできるだけ適正に把握します。それを学校現場と保護者にフィードバックし、対象の児童生徒がその「個に応じた指導」を受けやすくなることで、将来につながる能力の育成となることを目指しています。
本事業を立ち上げた背景は二つあります。
一つは、日本の公教育における知能検査が日本語版の検査であることにより、日本語力がまだ不十分な外国人児童生徒の知能が低く出てしまいがちです。そのこともあり、特別支援学級に在籍する外国人児童生徒の比率(*)が日本人児童生徒の比率よりも高い実情があること。
二つ目は、2030年の社会を見据えた改訂版学習指導要領(小学校は2021年度、中学校は2022年度、高校は2023年から全面実施)において「個別最適な学び」(教師視点では「個に応じた指導」)の重要性が打ち出されており、一方で、外国人児童生徒の「個」の把握は日本語のカベや文化の違いから難しさがあると思われます。特に、発達の特性のある外国人児童生徒はなおさらと言えます。本事業でポルトガル語版WISC-Ⅳ検査を実施することで「個」の把握を促進したいと思います。
*:分母は外国人児童生徒の全体数、分子は特別支援学級に在籍の外国人児童生徒数
本資料は、まだ最初の一歩ですが、今後も充実させていきたいと思います。学校現場や保護者の方々に役立つことを願うものです。